Kimozzi的ドライビング塾 for Woman
vol.2

 

 

◆ それでは続きます。


実践編:

1 クルマの動きについて
2 発進の時の注意点
3 ブレーキについて
4 スピード感について
5 コーナーリングについて

1 クルマの動きについて

これは基本編に入れるべきですが、実践に密接していることなので、ここでクルマの動きについての話をします。今後の話に良く出てくる言葉なども合わせてここで述べておきます。

まず、いきなりドライビングのツボというか、基本についての結論を、ここで先に述べてしまうことになりますが、クルマの運転で一番大事な要素は何かと言えば、
「荷重変動を出来るだけ抑えるような運転を心がける」
ということになります。クルマの動きと荷重変動は密接な関係にあり、これを理解するには必要な用語ですので、少し難しいかも知れませんが、基本的なことなんで、ここでこれらの言葉を覚えて帰ってください。

まず、クルマの動きには次の3つがあります。

縦方向、上下に動くピッチング(ピッチ)
横(回転)方向、左右に動くヨーイング(ヨー)
水平方向、左右に傾くローリング(ロール)

これらの要素と、その加速度(G)が合わさってクルマの動きが決まってきます。

アクセルを踏めば、前方向の加速度が加わり、クルマは前が上がろうとし、後ろが下がろうとします。この場合、荷重は後ろに掛かっています。ブレーキを踏めば、その逆で前が下がって後ろが上がります。これがピッチングです。この場合は前に荷重が掛かっています。

交差点を曲がる時、ハンドルを切ると横方向の力が発生し、ヨー(ヨーイング)が発生して曲がります。と同時に、クルマには道路からの外乱や衝撃を吸収するためにサスペンションが付いていて、このためにクルマは横に傾こうとします。これがロール(ローリング)です。ここまで読んでお分かりな様に、右カーブなら左側に、左カーブなら右の車輪に荷重が掛かります。

荷重変動というのは、この前やら後ろやら横やらの、荷重が動く時の速さと大きさのことを言います。先ほどの言葉を使えば、ピッチやヨー、ロールといった動きを急激に発生させることを荷重変動が大きいと言います。というわけで、荷重変動を出来るだけ小さく車を走らせることが、スムースに車を走らせる事になるわけです。そして荷重のコントロールのレベルが高いほど、モータースポーツの場では速く走れることを意味します。スキーなどと同じです。

荷重変動を極めることが、クルマの運転が上手になる早道と言えるのです。


皆さんは、「頭文字D」という漫画をご存じでしょうか? この漫画では、主人公の「藤原拓海」という少年が、まだ中学生の免許がない頃から父親の仕事(豆腐屋さんです)の手伝いをさせられます(笑)。で、まだ夜が明ける前の峠道を走らせ、豆腐の配達をさせるというものです。この時に、必ずおやじさんはコップに並々と水を入れてクルマのカップホルダーに置きます。で、配達し終わって帰って来るまでに、如何に水をこぼさないで帰ってこられるか…という練習をさせています。この練習法が何を意味するかというと、そのものズバリ、「荷重変動を起こさないドライブの訓練」なわけです(笑)。

これは漫画の世界なので、実際には水がこぼれないなんて事は無さそうなものですが、この話は現実においても、全くもって当を得た練習法と言えます。(と言っても、ボクはやりませんでしたけどね(笑)。)

2 発進の時の注意点

AT車の場合、発進時の注意点は、とくにはありません(笑)。シフトレバーをDレンジにしてアクセルを踏めば勝手に走り出します。おっと、サイドブレーキを降ろすのを忘れずに(笑)。強いて上げれば、後方確認を怠らないくらいでしょうか。(←至極当たり前)

MT車の場合は、クラッチをゆっくりリリースしながらアクセルをほんのちょっとだけ開けて、少しだけ回転を上げるようにして半クラッチで発進し、スムースに動き出してクラッチを完全に繋ぎ終えてからアクセルを徐々に踏み込みます。

アイドリング状態でクラッチをリリースしてもエンジンの回転が落ちないような、トルク(クルマを動かす力)が大きいクルマの場合は、完全にクラッチが繋がるまでアクセルは踏まないようにします。これをアイドリングスタートといいますが、クラッチを長持ちさせるには、この方法が最適です。

 


3 ブレーキについて

クルマの運転(操作)で、最も重要なのがブレーキングです。モータースポーツの世界では、ブレーキは止まるためだけにあるのではなく、積極的に速いスピードで曲がるためにあります。

ブレーキで大切なのは、先ほど書いた、「荷重変動を起こさないように減速する」です。どういう事かというと、踏み出しはあまり急激にしないでジワッと踏みだし、クルマの前に荷重が掛かってからグッと踏むようにし、ブレーキを抜く(緩める)時も一気にリリースしないで、スッと抜くように心がけることと、踏んでいる間は出来るだけ踏力を一定に保ち、むやみに踏んだり離したりを繰り返さないことです。教習所で「ポンピングブレーキ」というものを習いますが、あれは前に書いた「ベーパーロック現象」が起きた時の非常手段ですので、通常の走行では必要ありません。わざわざ荷重変動を起こしているようなものですからね(笑)。

車が完全に停まる前に、踏力を変えずにそのまま踏み続けると、クルマは「カクン」となってしまいます。完全に停まる前に、スッと抜くようにするとクルマもスッと止まります。後に述べますが、この感覚は、実は走っている時にも必要となります。上手くスッと止まれた時の、この感覚を覚えておきましょう。

クルマは、4つのタイヤで道路と結ばれていますが、接地面積ははがき4枚分と言われています。このたったはがき4枚分の接地面積と路面との間で生まれるグリップ力だけで、加速したり減速したり曲がったりの全てを賄います。前後方向にグリップを使い切っている(要はパニックブレーキ)と、クルマは曲がることが出来ません。曲がる時(ヨー方向に力を得たい時)は、その分のグリップ力を横方向の為に残しておかないといけません。最近のクルマはABS(アンチロックブレーキシステム)が付いているモノが多いのは、この横方向のグリップ力を残しておくためのものです。結果的には制動距離も縮まりますが、第一の目的が制動距離を短くするためのものではありません。雪道やヘビーウェットな路面などでは、逆に制動距離が伸びてしまう場合もありますからね。

じゃあ何の為かというと、タイヤをロックさせずに舵が利くようにするためです。タイヤがロックしていると、いくらハンドルを切ってもクルマは向きを変えてくれません。タイヤがロックした時に、自動的に小刻みにブレーキを緩めタイヤを回転させ、ハンドルを切った時に反応させるため、余力を残すために、このABSはついています。

と言うわけで、何しろクルマの運転で、一番難しいのがこのブレーキングです。ブレーキの踏み方如何で、ドライビングスキルが見てとれると言っても過言ではないです。それくらい重要なものだと言うことを、しっかり頭に入れておいて下さい。サンダルとか厚底靴で運転するなんて以ての外ですよ~(笑)。

 


4 スピード感について

クルマによって、スピード感は随分と変わります。安定感のある静かな車に乗っていると、あまりスピード感を感じないものです。逆に、軽自動車のようにうるさく、不安定なクルマなどは、実際のスピードよりも速く感じてしまうものです。ポルシェやフェラーリなどのスポーツカー等は、サスペンションも乗用車としては固く作られていて、安定感(スタビリティ)も素晴らしいですから、軽く流しているつもりでも、スピードが120km/h出てたりとかはざらです(笑)。余談ですが、この類のクルマは、普通のクルマで100km/hを出すような感覚で加速をすると、気が付かない間に200km/h出ています(爆)。

高速などでは、高速域に目が慣れてくると、スピード感が無くなってきます。段々感覚が麻痺してくるんですね(笑)。高速から降りて、いきなり40~50km/hの制限速度で走ると、随分とゆっくりに感じてしまうのはこのためです。高速から降りた時に、同じ感覚で車を走らせると必ずオーバースピードになっているので注意が必要です。目が慣れるまでは、意識的に、ゆっくり走るくらいの心づもりでいましょう。目安としては、周りのクルマを抜かないです(笑)。

 


5 コーナーリングについて

クルマは、ハンドルを切れば曲がります。当たり前ですね?(笑) でも、オーバースピードになると、その当たり前が当たり前じゃなくなります。こ、これも当然ですが(笑)。先ほど書いたスピード感ですが、これを養うことによって、今、自分が乗っているクルマが、大体どれくらいの速度で曲がれなくなるのかが分かってきます。もう一つ、タイヤとの会話という重要な要素が抜けてるんですけど、それはまた後ほど。

ここでちょっと、クルマのコーナリング特性についてお話ししておきましょう。クルマは、駆動形式、サスペンションの出来、重心、クルマの重量の前後配分等で、特性というか性格付けがされています。クルマがある一定のR(数学のRと同じね(笑)。この場合回転半径のこと)の定周路を走っていて、どんどん速度を上げていくとどうなるかというと、前輪がスリップしだして外にはらんで曲がれなくなる場合と、後輪が滑って内側に巻き込んでスピンしてしまう場合のどちらかになります。前者をアンダーステアといい、後者をオーバーステアといいます。どちらでもない場合はニュートラルステアと言いますが、物理的にクルマには自ずと限界がありますので、その言葉を使う場合は、相対的な言い方をする時だけになりますので、今は気にしないことにします。


駆動方式はクルマにイニシャルな特性を与えます。前輪駆動(FF)と4輪駆動(4WD)のクルマは、前に重量物(エンジンやトランスミッションなど)が有るため、基本的にアンダーステア特性になります。クルマには常に慣性という力が掛かってますから、頭が重いフロントエンジンのクルマは、振り子と同じで頭から外に逃げようとするのです。

後輪駆動(FR、MR)のクルマは、比較的オーバーステアになりやすいです。ポルシェなどのRR(リアエンジンリア駆動)のクルマは、限界特性は完全にオーバーステアです。お尻に重量物があるため、リアが一度流れ出す(後輪がスリップする)と、これもまた振り子の原理でなかなか収束せず、多くの場合がその場でクルリんとスピンしてしまいます。

さて、一般的な普通の乗用車の特性は、全体的にアンダー気味に設定されています。これは、安定性(スタビリティ)という意味もありますが、アンダーステアが出た時はスピードを落とせば(とくにFF車の場合はアクセルオフでタックイン現象が起き、頭を内側に振ろうとする)、クルマはまた曲がるようになりますが、オーバーステアは建て直しが難しい(カウンターステア…コーナーに対して逆にハンドルを切らなければいけない)ので、腕に覚えの無い人には危ないからです。

コーナリングを開始する前には、必ず、その曲がり角(回転半径)に見合ったスピードまで、ブレーキングで落とします。一般的に、回転半径を大きくとることで、クルマは楽に曲がれます。


モータースポーツなどでは、コーナーの基本的なライン(どこをどう通ってコーナリングするかの事)を「アウト・イン・アウト」と言って、外から入って、クリッピングポイント(コーナーの頂点)で一番内側につき、また外に向けてコーナーを脱出する方法をとります。一番速く走れるラインはこれが基本形だからです。これは、一般道を走る時にも応用出来ます。車線の許す範囲で、出来るだけ大きなラインをとり、出来るだけハンドルを切らない(舵角の少ない)様に直線的なラインをとることが、スムースな運転のコツです。その際ステアリングは、切り出しはワンテンポ早くし、切り出したらゆっくりと、スーッとコーナーのRに合わせて切り込んでいくのが正しいアプローチです。これは、戻す時も同じです。一気に切ったり、一気に戻したりするのは×です。これもまた、自分で荷重変動を大きく起こしているようなものです。

アタマには常に、「荷重変動を出来るだけ起こさない」を意識して走っていると、自然にそういう走り方になってきます。分かりやすく例を挙げると、助手席に誰かが乗っていたらシメたもの。この助手席の人のアタマを気にしつつ、出来るだけ揺らさないように走ろうと意識することです。助手席の方にも「この人は運転がスムースだから安心だわ!」と喜ばれますよ(笑)。逆に、ブレーキを踏む度にアタマがカクン、加速する度にカクン、コーナー曲がる時にカクン。これでは、いつまで経っても上達しません(笑)。

 


◆ というわけで、公道編は次回に持ち越しです(爆)。(←まだ続くのか?)

やっぱ、2話じゃ終われなかった…。

 

♪♪ Have Fun ?? ♪♪